六大学野球を見に行った
2010年11月、50数年ぶりだとかいう、六大学野球の優勝決定戦としての早慶戦を、NHKの全国放送で観たひとりの少年は、早稲田大学に憧れた。日本ハムの斎藤佑樹がキャプテンの年だった。
点が入るたびに、スタンドを埋め尽くした早大生が肩を組み「紺碧の空」を大声で歌っていた。
その秋から、15ヶ月先の大学受験に向けて猛勉強を始めた。最低でも早稲田に入れるようにと、とある東京の国立大学を目標に掲げた。これが失敗だったのだと思う。
その少年は、どこで気を抜いたのかは知らないが、最低限の目標すら達成できなかった。
それでも、六大学の他の大学に合格することはできた。そこの過去問対策はしていなかったので、まさに僥倖と言うべきだった。
その紫色の群衆に加わった瞬間、我如古選手の犠牲フライで明治大学に追いついき、「立教健児」を仲間と肩を組み、歌った瞬間、入学以来モヤモヤと心のどこかにいたあの少年は、どこかに昇華されたのだと思う。
愛校心を持たずに気づくと3年も通っていた。少しは自分の大学を好きになれた瞬間である。優勝は逃してしまったが応援に行く価値があった。
友人諸君も、たまには大声を出しに神宮球場に行ってみてはどうだろうか。次の六大学リーグ戦は4年の春。始まっているであろう就活のストレス発散にはうってつけだ。