Maekazuの社会学

社会学を学ぶ大学生が、その時々思ったこと自由にを書きます。

20世紀のおわり、中学生たちは、俺たちを一括りにするなと叫んだ。

重松清の『エイジ』は僕にとって青春のバイブルだった。
何度も繰り返し読んだ。適当に開いたところから読み進めるくらい読んだ。新潮文庫だったが、カバーはどこかになくなった。
 
あらすじを簡単に紹介しよう。東京都下のニュータウンで連続通り魔事件が発生する。ある日、中学2年生のエイジの同級生が容疑者として逮捕され、世間を賑わす。
その中で、エイジたちは連日「少年A」として報道される同級生に違和感を覚え始める。中学生だって色々な奴がいるんだ。いい奴だって、悪い奴だって、馬鹿な奴も頭のキレるやつもいる。ませたやつもいれば、まだまだガキっぽいやつもいる。
それなのに「キレる中学生」「中学生の犯罪」「援助交際する中学生」と、一括りにされた「中学生」という言葉は何かと悪い言葉を寄せ付けるみたいだ。
 
 
その主人公の中学生たちが繰り返し発していたメッセージが「俺たちを一括りにするな!」だった。
 
 
エイジと掛けているわけではないが、僕がまだ初々しい大学1年生の頃、学内の英字新聞出版会に出入りしていた。
 
これからの世界、英語が扱えることはマストであるし、新聞社のコラムニストになることが中学時代からの夢だった僕は、青年〜壮年期は新聞社の海外支局で過ごしたいという願望が密かにあった。それならば、イングリッシュ・ライティングの訓練をしておくに越したことはない。
勧誘に対して二つ返事で入会した。桜の舞う池袋キャンパスでの出来事だ。
 
入学した2012年の春は、やけに風の強い日が多い春だった。そして、原発問題は今よりもずっとホットなテーマだった。
 
新歓遠足では、新木場にある第五福竜丸ミュージアムに行った。
(まあ、確かに見るに値する場所だ。一度行っておけて良かった)
僕と同じ新入生には、浪人時代に駿台で福井紳一氏に日本史を学び、何かに目覚めたという女史もいた。熱く語った。
普通の人ならこの時点でお察しだろう。
蓋を開けてみると、完全に左寄りの団体で、時代遅れの学生運動みたいな人たちの集まりであることが次第にわかってきたのだ。
 
僕もどちらかというと左寄りだと思う。そして、彼らの主張に同意できることも少なからずあった。
しかし、僕が左寄りだというのは、革新政党中道左派的な福祉政策に期待をしているからであって、「ゆくゆくはこの世界で幸せに生きたい」と望んでいるくせに、そして、親の財産を消費して私立大学に通っているくせに、革命を叫ぶような、いわゆるファッション左翼が大嫌いだ。
 
デモに対しても、匿名の影に隠れた言論は、大学で学問を修めたようないわゆる知識人がするにはあまりにも卑怯な行為だという考えを持っている。
 
その春、オスプレイも同様に物議を醸していたが、ゴールデンウィークに合宿をして、オスプレイ反対デモに参加しながら取材しよう!と誘われた瞬間に、僕は部室から逃げ出した。
 
 
最近、久々に彼らと会った。
 
当時の2年部員が4年生になり、中心的な立場にいるのだろう。授業前の講義室の教壇に立って集団的自衛権について演説している。米軍の先制攻撃に続き、自衛隊が仮想敵国の船にミサイルを打ち込み、敵役の船は真っ二つ。そんな合同軍事演習の画像を提示していた。
 
僕は毎回講義室の最前列に座っているため、すぐに目にとまってしまう。
どうやら未だに、彼らは僕を同志だと思っているらしく、調子はどうだい?なんて聞いてきやがる。
面倒なので、ブログで言論活動してますよと、このブログの存在を明かした。
 
社会的に見れば、僕もこの赤い英字新聞の人たちと一括りにされてしまうのだろうかと思った。
権力に対しては徹底的に「面倒くさいヤツ」でありたい。この点は同類項。
 
それでも僕はそれ以前に教養人でありたい。深い教養に裏打ちされた批判はある意味、社会の光だろう。
 
(同様に、目先の利益とかキャリアのことしか考えられない「意識高い系大学生」とも一括りにされたくない)
 
以下、愛光学園のプリンシプルの一部を引用する。
われらは、
世界的教養人としての深い知性と、高い徳性を磨かんとする、学徒の集まりである。
学問に対する情熱と、道義に対する渇望とは、われらの生命である。
幾千年にわたる、人類苦心の業績-この高貴なるものによせる愛情と尊敬、
これを学びとるための勤勉と誠実、これを伝え、これに寄与するための忍耐と勇気とは、われら学徒の本分である。
かくて、高貴なる普遍的教養を体得して、世界に愛と光を増し加えんこと、これがわれらの願いである。
 
 
世界的教養人は大袈裟かもしれないが、これくらいの心意気でラディカルにいこう。


PS.生身の人間関係のことなので、実在の団体名は伏せています。また、団体の性質も一部フィクションで書いてます。